七つの子が生まれた日
佐野権太

祝いのメロディのなか
少し照れたおまえは
肩をすぼめて優しくゆれている
ななつのロウソクの灯を
遠く、近く
瞳に映して


おまえの生まれたときを思い出すよ
(パパ、気絶しちゃったんでしょ
ああ、そうだ
なかなかおまえが出てこれなくて
ママは苦しんでいたんだ
それなのに
先生が
お腹を押してみましょう、って言うんだ
あんなに苦しんでいるママは
見たことがなかった

おまえが生まれる前のママは
病気をしたりして
とても弱っちかった
それなのに

(女の人が気絶していたら
(子供を産めないよ
そうだ
おまえの言うとおりだ

先生がママの大きく膨らんだお腹に
馬乗りになったんだ
耳の奥がばくばくして
押しますよって、先生
その肩が盛り上がった、瞬間
すぅっと血の気がひいて
視界がぐるりと回ったんだ


自分の痛みよりも
人の痛みのほうが
遥かに痛いことがある

娘の柔らかい髪を
撫でる
いつか、わかるよ

廊下の
黒い長椅子に寝そべって
初めて聞いた
おまえの声

あのときの話をすると
何の役にも立たなかった
って言いながら
ママはとても嬉しそうに
笑うんだ






自由詩 七つの子が生まれた日 Copyright 佐野権太 2007-06-14 00:01:31
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家族の肖像