どこにもいない男
麻生ゆり

彼はどこにもいない
会社にだって
公園にだって
トイレにだって
いない
それなのに彼は
どこにもいない植物を
育てている
何のために使うのかは
わからない
でもおそらく
それは観賞用だと思われる
なぜならば
彼は何もしないことが
好きだからだ
植物を育てているのも
彼の存在意義を
作っているようなもの
彼は
本当は不安なのだ
どこにもいないことで
焦っているのだ
だけどどこにもいない男は
今日も
どこにもいない


自由詩 どこにもいない男 Copyright 麻生ゆり 2007-06-13 02:03:59
notebook Home