故郷
たりぽん(大理 奔)
はぐれものは
ふるさとの名前を知らない
だから、私の汗ばんだほほを
冷たい指でぬぐいながら
細く、薄青いくちびるで
君が名付ける、それが
たどり着きたいふるさと
「星宿」と名付ければ
そこは星であふれかえる
「銀河」と名付けてみれば、
やはり星であふれかえって
「世界」と名付けたとき
ついに、居場所をなくす星達
きれいばかり、集めてみる
きれいな名前も、色も、時間も
きらめくものばかり、まばゆくて
ふるさとの影は濃さをまして
地図を指でなぞり
枠の向こうの曲線に馳せ
香りや湿った風を想い
温もりが欲しくなると
君は名付ける、君の名前
もう会えない人を呼ぶと
故郷は星のように遠く
会いたいひとと名付ければ
やはり星のように遠く
いま腕の中にいるひとを呼べば
いつでも私はふるさとに抱かれ
きらめくものなど無くても
影はその濃さをましてしまう
昔、旅立ったまま
ふるさとの名前を知らない
影踏みの行方のように