地下鉄
佐藤伊織

*
タキオンが像を結び
無数のクラゲが空から
淡い光を放つ

*
どこまでも歩いていっても元に戻ってしまう
三畳間の宇宙に

*
生まれてから白痴に至る世界

*
笛を吹いている神の
脳髄は既にない

*
淡い光が
深い闇を行く時
それを
誰もみることもなく
その光が闇を進む時
そして
その光が消えるとき

何も
生まないだろう

世界は白痴に至り
脳髄はすでにない

*
救われたいと
願う人の列が
三田線の地下道に

*
列車がくる
無数の人を乗せた列車が怖くて
ああ
列車がくるのだ
この地下を轟音を響かせて
無数の無数の無数の人を乗せて





自由詩 地下鉄 Copyright 佐藤伊織 2007-06-10 22:08:38
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