欲しいモノ
望月 ゆき
「ラムネ買って」
「チョコレート欲しい」
そう言ってねだる子供達に
困り果ててなお笑顔の母親たち
あのころ
欲しいモノといえば
せいぜい駄菓子屋のおばちゃんに
100円玉ひとつ渡したら
山ほど買えるような
そんなものばかりだった
いつからだったろう
100円玉を渡す相手を
神様 に変えたのは
ぼくの欲しいモノも
スーパーの棚に
ラムネやチョコレートと肩を並べて
陳列されていたなら
こんなにも 苦しまずにすむだろうに
欲しいモノのために
ぼくは何が出来るだろうか。
欲しいモノのために
ぼくは何を捨てられるだろうか。
そればかり考えて過ごすけれど
こたえは見つからない
ある日 庭に出て青空をみあげて
深呼吸した
その時
ぼくは 知ってしまった
神様でさえ
かなえられないことがあるのだ、と。
空に貼られた
スーパーの特売のチラシで
知ってしまった