ノート(象応輝)
木立 悟



越えると海があり
越えると
またひとつ海がある
踏みしめた
指のはざまの
銀色


風の来る方へ
息を吐き
風を吸い
空洞の
奥の奥を
のぞきこまれることに戸惑う


曇から地まで 一本の
途切れることのない雨が
揺れながら
降りながら
まぶたの内にも
降りながら


そしてふたたび
濡れては昇る
濡れたものの一部を持ち去り
白から青へ
青から蒼への
長い路を昇る


飛び去ってゆく音の跡が
銀に映り 銀を梳く
海と海を分ける窓
隔たりは小さな鏡のように
くりかえしくりかえし
小さな息に洗われている


横たわり
うすくひらかれた目に
午後の灰はまぶしく遠い
ほどく手
つむぐ手の生まれる場所に
持ち去られたものらはかがやいている















自由詩 ノート(象応輝) Copyright 木立 悟 2007-06-10 09:54:58
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