創書日和「窓」
虹村 凌

お母さん
お父さん
僕はもうハイライトを吸っても咽なくなりました
きっと僕の肺は真っ黒でしょう
それでもお母さん
お父さん
僕は乳癌になったりしないんだ
だから僕が好きになる女の子は乳癌にならないんだ
さぁ彼女の部屋まで煙草を吸いに行こう
きっと狭い部屋だから僕が寝られる隙間なんて無い
部屋干し下着の暖簾をくぐって
さぁ彼女の部屋まで

お母さん
お父さん
僕は900円を稼ぐ為に高校生に水を汲みます
彼らが一食で使う金額であり
彼らが15分もかからずに食べ終わる食費を
彼らの4倍5倍の時間をかけて稼ぎます
それでもお母さん
お父さん
僕は彼らと代わりが無いんだ
だからもう何も言わない事にしたよ
遊ぶ金欲しさに100ドルも水増し請求するのと
大して差は無いのだから
さぁもう眠ろう
フローリングの床で

窓から投げ捨てる煙草が明日の運命を行く先を告げるのだ
幾千億年前の光が告げる明日よりも幾分現実味があるよ
なのに僕の仲間達は今夜誰も家出の計画を建てたりしない
支配者達が眠った後に窓を抜け出して危ない橋を渡ったりしない
車輪の下で長靴下のピッピが通り過ぎるのを眺める
ユニオンジャックを切り裂いて日章旗を飾った窓辺で
僕は煙草を吸っては投げる


自由詩 創書日和「窓」 Copyright 虹村 凌 2007-06-10 00:49:14
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