小さな君
doon


 僕は 僕は!!
 この粉をすべて掬いあげたい
 手から一つ一つが
 暗闇に吸い込まれていく
 僕は服を使って
 口も使って
 両手も使って
 全部残らず掬い上げる気持ちで
 かき集めても
 かき集めたって
 溜まらないじゃないか!
 すく

   僕は!!!

 全部救うしかないんだ!
 握り締めるだけで壊れていきそう
 ガラスが割れてしまう前の瞬間を僕は
 知った
 だけど! だから!
 僕は救いたいんだ

 君の姿を見たときから
 聞いたときから
 僕は逃げ出したかった

 僕は!
 絶望から脱力して
 崩れ落ちた

 だけど、ぼくは!
 ぼくはきみをすくいたい!

 涙の跡を乱暴に拭いて僕はかき集める
 少なくなった 君
 もういい
 僕の母と
 君の母が言った
 だけどそこには
 君がいたんだ
 君が
 君が!!

 僕は!


 あの時、少し逃げた
 どうしたらいい
 そう言ってばかりで逃げていた
 強く握る
 小さな君を
 僕は精一杯握り締めた

 ごめんって
 僕は言えなかった


自由詩 小さな君 Copyright doon 2007-06-09 01:45:20
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