*植物園まで*
かおる
風薫る五月は様々なニュースを吹き流し
五月雨が哀しみをぽとりと垂らす
滲んでいった誰かの想いを背負って
命にきりきり舞いしているときは
ライオンが行ったり来たりしている様子や
猿山の日常を眺めるよりは
動かない樹をじっくり観察するのがよい
さりとて、公園に行って緑の樹々を眺めても
さわさわと風に蠢く葉の音が煩くて
まるで汚職に塗れていく緑の実体を醸し出すよう
タイサンボクに咲き誇る顔よりも大きな白い花は
無念に散っていった命の残像なのかもしれない
そう、動物園も公園もいつもは
ほっと出来る憩いの場所なのに
なんだか落ち着かない
そんな時は
ガラスに囲われた無菌室みたいな植物園で
まるで関係ない熱帯のどぎつい花々を愛でたい
グリーンのバナナの房に一安心して
オオオニバスに乗りたかった小さかった夢を憶いたい
ねっとりした空気が撹拌されて
生きてさえいれば、めっけもん。
ほら、ぶくぶくと泡のような呟きが聴こえる