*植物園まで*
かおる


風薫る五月は様々なニュースを吹き流し
五月雨が哀しみをぽとりと垂らす

滲んでいった誰かの想いを背負って
命にきりきり舞いしているときは

ライオンが行ったり来たりしている様子や
猿山の日常を眺めるよりは

動かない樹をじっくり観察するのがよい

さりとて、公園に行って緑の樹々を眺めても
さわさわと風に蠢く葉の音が煩くて

まるで汚職に塗れていく緑の実体を醸し出すよう

タイサンボクに咲き誇る顔よりも大きな白い花は
無念に散っていった命の残像なのかもしれない

そう、動物園も公園もいつもは
ほっと出来る憩いの場所なのに
なんだか落ち着かない

そんな時は

ガラスに囲われた無菌室みたいな植物園で
まるで関係ない熱帯のどぎつい花々を愛でたい

グリーンのバナナの房に一安心して
オオオニバスに乗りたかった小さかった夢を憶いたい

ねっとりした空気が撹拌されて
生きてさえいれば、めっけもん。
ほら、ぶくぶくと泡のような呟きが聴こえる


自由詩 *植物園まで* Copyright かおる 2007-06-08 17:14:07
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