Poesie
The Boys On The Rock


放たれた矢は射手の胸に刺さる
ゆえに詩は死
死は史にも通じ
後者は一般に過去を記録した事象を示す名詞である
詩が死であるところの史とは死の記録
過去とは死者の王国である
つまり どんな健全な詩の肉体であっても
広大な黄泉路の世界が内包されている
詩を読み綴るとき
我らが死を意識せざるをえないのは
このような宿命論的な理由からである
だが はたして本当に詩とは死なのであろうか?
事実 春とは残酷な季節であり
炸裂するenergyにより死に絶える生物の終焉の時でもある
破壊される淘汰されたいのち
詩と死 あるはい破壊
【破壊】−クワイ(名・スル自他動)やぶりこわすこと。注)
ならば 通常 動的である破壊を
静寂を連想させやすい死と結びつけることは
わたくしごととはいえ いささか抵抗がある
破壊と死と詩
または
死と死と詩
いや
動と静と近似値であるかも知れぬ詩

放たれた矢
(矢とは[si]とも発音する)
無論 人によって射出される詩という矢
詩とはやはり矢なのであろうか?
なぜなら
太陽の金属で鋳られた「現代」詩という矢は
小賢しい世紀末の猿の手を離れ
遠いハーデスの地平や
過剰な光ゆえに 破壊的な世界の中心点すらからも
見放されているからだ
・・・では ある引用から
「詩 放たれた矢は射手の胸に刺さる」
このテクストによると
いつか 詩は
すべての神々の世を通り越し
私の胸(あるいは別の部位たとえば頭)に
突き刺さるかもしれない
それは 天井につるされた長剣であり
あわれな希臘人の頭を
いまだ狙っているだけかもしれないし
すでに 貴婦人の胸元へ
銀色の雄しべをそそり勃たせているのかもしれない
だが やはり謎
であるところの詩
詩と破壊
神話の中にある悲壮な詩 いや 死
死 破壊され それは記録される
歴史に記録された美しい死 いや史
史とは記録された死 あるいは近似値かもしれぬ詩
ならば 破壊され 美しく それら記録される詩は
同時に謎

注)新潮現代国語辞典より


自由詩 Poesie Copyright The Boys On The Rock 2007-06-05 20:49:57
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