ハローワーク
大覚アキラ

春が逝ってしまったので
とりあえず泣いてみた
道端で通り過ぎる人々に
誰彼構わず縋りつきながら

警官が現われて
ぼくを羽交い絞めにして
無理矢理パトカーに押し込めた

パトカーの中には
ぼくと似たような気分の連中が
ギュウギュウ詰めにされていて
警官はうんざりした顔で
「この季節になると
 お前たちみたいなやつばかりで
 まったくもうやってられんよ」
とこぼした

警官のこぼしたそれが
蒸発する前に慌てて拾って
ちゅっと口から吸い込むと
ゼリーのような食感で
なかなか旨かった

そしてぼくも
「この季節になると
 お前たちみたいなやつばかりで
 まったくもうやってられんよ」
とこぼした

ぼくのこぼしたそれを
パトカーの中の連中は
泣きながら奪い合って
それを眺めながらぼくも
やはり彼らと同様に
泣いていた

明日からちゃんと働こう
そう思った


自由詩 ハローワーク Copyright 大覚アキラ 2007-06-05 11:44:30
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