4階の月
あやさめ

片方の耳を塞いで
遠回りした迷路の
転んだ看板に捨てられたような

連続体じみた明後日から
一昨日へ向けて打ち出された叫びが
目の前の髪の毛をかすめて

4階の窓から見える軒下の人影
彼が何をしようとしているのか見えていないから
後になって気づくのだろうもう一人の眼をした誰かが
ベランダから身を乗り出した月に滑り込んでいく

テレビの中から繋ぎ止める輪のような
足元をいつもより遅く溶けていく氷の流れに
目的が見つからないとため息ついてペンを取る
普通のおかしな風景を書き綴る

テーブルの隣には椅子が1つだけ
横倒しになって笑っている そんな想像の上
カーテン開いた音がいつまでも二重なので
コップを落としてしまう 割れない音が作られる

誰彼かまわず息苦しそうに眠っているこの部屋の空気が
それに比例して薄くなったり濃くなったりしないから
とても不機嫌そうに君が「不公平だよね」なんて言うものだから
布団被せてあとは手品を始めるだけ


消えてしまった布団の中に太陽は姿を消し
4階の窓から映る月の形を欠けさせたのは僕じゃなく
傷口に耐えられない人々の時間が過ぎているこの部屋にはいない
誰かの夢の中に見つけてしまった誰か


自由詩 4階の月 Copyright あやさめ 2004-05-10 22:53:48
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