【おとなのための童話】スキマの恋人編
るるりら

【おとなのための童話】

あなたは、スキマは好きですか。たとえば、大切な人とのスキマはどうですか。     

あるところに ひとくみの 恋人どうしがおりました。
ふたりは おたがいの間に生まれた スキマに、一輪の花を植えました。
じぶんと あいての スキマに一輪の花を植えましたが、
しばらくすると じぶんと花との間にも スキマがうまれるのです。
じぶんと 花のスキマにも 花を植え、花という花のスキマにも花を植え
花とあいての スキマというスキマに花を植えました。

花はいつまでも咲いてくれているわけではありませんから
スキマは いつまでたっても生まれるのでした
恋人どうしは いつまでもいつまでも スキマというスキマに花を植えました

そうしているうちに
そのふたりは おたがいが おたがいであることも忘れてゆきました

忘れても忘れても ふたりはスキマというスキマに花を植えました
かぎりなく花をうえておりますと、こんどは 花が勝手にスキマから生えてくるようになりました 蜜のにおいが立ちこめて おふたりは なにも思い出せない人になっておしまいになり、いずれは風になって しまわれました。

わたしたちは いつも このふたりのことを 忘れて居ますが、このふたりこそがこの世にいる わたしたちすべての人間のルーツです。わたしたちは 忘れんぼうの種族です。わたしたちは忘れているだけなのです。そして、たまにしか思い出さない。けれと゜わたしたちは 好きで もとめあっていてスキマに花を植えてきた種族なのです。

ほうら、あなたと その隣の大切な方の スキマにも あのおふたりがが花をうえに来られましたよ。ただひとことでいいんです。目にみえる事柄だけにではなく、「ありがとう」といって あげてくださいな。そうすると スイッチが入るみたいに あなたの目の前のスキマから、希望の種が芽吹いていくのとのことでしたとさ。

                    〜おしまい〜
 


自由詩 【おとなのための童話】スキマの恋人編 Copyright るるりら 2007-05-31 17:38:30
notebook Home 戻る