sauce
水町綜助

バルサミコソースが複雑に酸っぱくて
関係ないのにあの汗の味に似ていたからって
ああもうぜんぶだめなんだとフォークを置いた
まったく大げさな話だ
こうやって一日中町をふらついたあと
溶けた飴で出来たバーの中
きいきい鳴く一席に浅く坐って
焦げ付いたポスターが風にたわむ音を聞きながら
町の上に昇り続けている太陽に店ごと透過されつづけている

黄金いろだ
夜の間中

置かれた銀色のフォークがゆれてる
その光だけがぶれて

 
 +四杯目から+
  
  夜に思うこと
  
  暗闇のこと
  
  手探りであること
  
  背中の不可視性
  
  鏡への懐疑
  
  肉眼のこの二つの瞳のよわよわしさ
  
  その濁り方
  
  隻眼将軍のこと
  
  つるぎのこと
  
  切先の描くほそい線のこと
  
  盲目のこと
  
  光のこと
  
  金色の光
  
  あたらくしあ
  
  この店の中
  
  すかすのは
  
  光ではなく
  
  床にぶちまけられたビールの匂いだ




















自由詩 sauce Copyright 水町綜助 2007-05-31 14:51:00
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