夏までの波
銀猫

今日の風は西から湿り気と
憂鬱の温度を運んで
まだ頑ななガクアジサイの毬に
青、を少しずつ与える

日増しに色濃いぼんぼりを灯して
夏空の予感を語るのは
滲む青と翠と


傘の冷たさに寂しくならぬよう
ひといきに水滴をはらいながら
ふと
わたしのとなりで
同じ仕草をしていたきみの
しろい横顔を思い出す

(ああ)
(あのとき、雨だったね)
(きみのために泣けなくなって久しい)

六月の空は何処か
きみの気配がして
時折わたしの代わりに
雫を落とす


思い出と言うなら、夏までの波
素足に冷たく泡立っては
追いつかないこころを曳いて
足元の砂を奪いながら
からだだけを置いてゆく
こころ深くを翠に染めて





自由詩 夏までの波 Copyright 銀猫 2007-05-28 21:25:20
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