シモベ的
示唆ウゲツ


すこし苦しんでから反吐が出そうだ。
暗闇の向こうから何かがやってくるに違いない。
よわさなんてもんを知る前に僕は、彼のことを知って
彼のことを知ってからは薄く伸ばすように彼女のことを知る。
不幸なんて呼んでいる重圧にたまりかねた大家は怒っていた。
ざーざー鳴るテレビの横には立てかけられたままの折りたたみ傘。
おっきな磁石でできたテーブルの上には文字通りマグ・カップがあって
ゆらゆらとこぼれた僅かな悲しみでさえあったまるようだ。
冷たいパンに塗るバターよろしく、僕は頑固者だ。
崩れていくのは自分自身なのにね。
洗濯物をしまってから「ああ、あしたはあめだよ」
空中から見下ろす君は あたたかな羽と手でもって何とか生きていた。



自由詩 シモベ的 Copyright 示唆ウゲツ 2004-05-09 04:01:09
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