aerial acrobatics 9
mizu K


***


ashley's ashes

黙々と浜辺で流木をひろい、こわきに抱える
あるく
波打ちぎわが
日没の汀が
潮騒のざざわざわ

降るまえにあれを灰にせねばならぬ
今日が
アシュレイの火葬日
明日は灰の日
遠い水平線の潮


***


slowly snow

海のただ中に放りこんだ
体が溶解していく
上昇する気泡が
逆回転する雪のようだ

降っている
天にむけて


***


sea shore

都市に流れこんだ
大量の水で水没した
建物に残された水位の痕跡
水で満たされた当時は
水面からうすく射す光で
水中花が咲いて
私は貝のように口をつぐんだ
その日は大潮で
きっと月が近づきすぎたのだ


***


sad sand

どれだけ悲しんでも乾いてくれるので
砂漠はすきで
じっとしているとやがて
包みこんでくれる
やさしき人の手のひらにくるまれて
思い出すことを
この世界に来る前のこと


***


gray wolf

積みかさねた流木に火を放つ
ここはかつて海だった
想像の浜辺で想像の流木をひろい
想像の火葬をし想像の火を放つ
ただひとつ想像でないのは
アシュレイのむくろ

ハイイロオオカミののどは
二度とふるえることはなく








自由詩 aerial acrobatics 9 Copyright mizu K 2007-05-26 10:14:44
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