異路
木立 悟


人のなかに 波のなかに
言葉を放ち
よろこびもしあわせも捨てようとしている
見知らぬ雨 見知らぬ路
見知らぬ緑
石にはね返る言葉を見つめていた


誰もが居るのに 誰も見えない
ざわめきと静けさを繰り返す路


板の仮面 鉄の仮面
通りにあふれ
互いにわからない彩りにゆらめく
隠した音 失くした音
見つけられずに
そばをすぎてゆく手のひらを見つめていた


かけらと渦とが 光に変わり
傾きと哀しみを増してゆく路


波を抄い 景を抄い
水底を抄い
ぬぐい切れぬ憎しみを捨てようとしている
子どもたちの遠い歌に
ちりばめられた鈴
ただまぶしげに足音を見つめていた


虚ろな手の葉を 照らしながら
響きつづけ分かれゆく異なる路






自由詩 異路 Copyright 木立 悟 2004-05-08 17:58:26
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