さらば 春の日
ワタナベ


桜散るのは夕日の丘か
日暮れ近づく夕日の丘か
散りゆく桜は薄紅色
薄紅色の十二単
十二もまとった春の衣
一枚脱げば夏の予感


呼んでいるのは母の声か
遠い故郷の母の声か
故郷の川は変わりはないか
今年も鮎はのぼってきたか
野いちごは青く実ったか
シロツメクサの甘い香り


夕日の丘にも甘い香り
かえっておいでと故郷の香り
もうかえろうか葉桜よ
おまえも独りじゃさびしかろ


散った桜は消えてゆくのか
故郷の山に初夏まで残る
忘れ去られた残雪のように
散った花びらしきつめられた
そこに座って今夜は飲もうか
飲んで儚い桜の花の
夢でも見ようか

さらば春の日





自由詩 さらば 春の日 Copyright ワタナベ 2004-05-05 20:52:17
notebook Home 戻る