ワタナベ





縁側につるされた風鈴を
さやかに押すその御手
彼らは海峡をこえてゆく海鳥の
滑空する翼の先端に生まれ
たたみで昼寝をする私の
ほほをなでて死ぬ





二人の間を通り抜けた風は
遠く海を渡り
草原にぽつりとある家の前におちました
少年は風にたくさんの愛のことばを書いて
空に解き放ちました





エントロピーという言葉を知っているかね?
すべての物質を構成する分子、原子の存在する乱雑さを示す値だよ
エントロピーが減少する、エンタルピーが増加するということと同義だが
ギブズの自由エネルギーの許す範囲でエントロピーが減少する
すなわち物質の乱雑さが少なくなり、ある一定のベクトルを持つようになると
風というものが発生するわけだ
すなわち風というものは物質のある一定方向へ収束したベクトルに他ならず
風が生まれるということはすなわち大気の集団的な運動のことである
わかるかね?諸君

しかし授業は終わりだ、諸君!

諸君!
窓を開けたまえ!
諸君の感じたそれが風だ




自由詩Copyright ワタナベ 2004-05-05 19:10:20
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