かや

若草色のスカートの金具が
押さえられた背中に擦れて
小さな傷をつくる
心地良く冷たい 磨かれた床は
父だったのに

眠ったふりをして
扉に向けた工作鋏を
両手できつく握り直した
桜色の やわらかい毛布は
母だったのに

終電を待つホームでは
薄黄色く光る蛍光灯も
ペンキが剥げた柱も
駅名のプレートも フェンスも
みんなくるしい
解り合えるのは焼けた石と
錆びた線路で
思い出すのは紺色の制服
俯く真昼のひとりぼっち

月にも土にもなれやしないなら
降りる駅などどこにもないと
父にも母にも会えやしないなら
帰る部屋など必要ないと

揺らぐ夜空にぼんやりと
知り過ぎている嘘をついた




自由詩Copyright かや 2007-05-11 21:13:09
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