言葉たりない話 上から下
長谷伸太
光ふりそそぐ夜水の底
月の声響きわたる
風もなく静かに水を揺らす
一本の小さな水草は
毎夜月の声を聞く
何か伝えたいけれど
水の外 空の上に
伝える術は何もない
ゆらりゆらり水に揺すられる
一度でも手を繋ぐ事が出来たら
よかったのに
さようならさようなら
水草はもう水の塵になる
揺れる水にやわらかく
広がり溶けていく
水に映る月の姿
揺らすのは涙
地上の草木も露をかぶる
自由詩
言葉たりない話 上から下
Copyright
長谷伸太
2004-05-03 22:30:51