「 はながみさま。 」
PULL.







鼻を打つといつも、
はながみさまがやって来る。
はながみさまは襤褸を着て手に薄紙を持っていて、
薄紙はごわごわの紙とぬわぬわの紙のふたつで、
わたしは何故かいつもぬわぬわのを選ぶ。
ぬわぬわの紙を軽くふたつに裂いて、
片方を鼻に詰め、
もう片方で涙をぬぐう。
ぬわぬわの紙はぬわっと、
鼻の血と涙を止めてくれる。
はながみさまはじっとそこに、
いる。


止まると、
はながみさまはぬっと、
わたしを抱き締め、
さっと消える。

見届けると、
わたしは裏庭に行く。
庭の土の上に紙を置き、
じっと、
待つ。



やがて夜が来て月が来る。



紙は、
月に触れると、
ぬぼっと燃え上がり、
ぬわらぬわあら、
空に還って、
ゆく。

わたしはまた涙を流し、
ひとりで、
ぬぐ、

う。












           了。



自由詩 「 はながみさま。 」 Copyright PULL. 2007-05-01 17:26:45
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