実験室65−F
塔野夏子

塔を隠した樹々たちがくりかえす
やわらかな墜落

螺鈿の微笑を浮かべる遊星たちが
結晶状に形成する空間に
浮かべられた白い柱廊に
並べられたフラスコ

時折それらのいくつかの中で
新しい時が
あるいはかつて存在した時が発生する

あるいは蒼穹が発生する

旧い天秤の両の皿に
温かく昏い水がゆっくりと交互に滴る

実験者の白衣の背後で
記録はすべて扉のかたちではためいている





自由詩 実験室65−F Copyright 塔野夏子 2007-05-01 17:25:52
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