土曜日9時48分の庭
はじめ

 僕は瞬間的に庭を受け止める
 そこには平安が待っている
 一時的な小雨がばぁぁぁと降り注いでいる
 僕は庭のデッキチェアーで君を待っている
 君は嫌がるかもしれないけど僕は君を待っている
 僕は片手にコーラを持って赤いストローで飲んでいる
 小雨のシャワーは眠気覚ましにちょうどいい
 一面芝生で 端はずっと遙か彼方にある
 吐く息は微かに白く コーラの僅かな飲み口に雨がちょっと入ってくる 水滴がペットボトルに付いて僕は少し飲む気を失った
 君は10時に僕に会いに来る でもいつまで経っても時刻は進まない 時計の針が雨に当たり過ぎたせいか止まっている よくあることだ しかし これではいつまで経っても君が来てくれない 時計の針がただ?止まっている?だけなのか それとも 空間の中で 時間が?進んでいない?のか どっちなのか分からない ?空間の中で時間が進んでいない?とはどういうことなのか ?停止?しているということなのか? だが小雨は降り続きコーラは相変わらずシュワシュワと泡立っている ただ時計の中やこの世界に流れている?時間?だけが止まっている 時計が止まっているということは 世界の時間が止まっているということだ 家の方へ振り向いて 母や妹の動きが停止しているだろうか見て見ればすぐだったがそれはしなかった 僕は今だけ家族の存在を否定していたからだ この9時48分の庭の?世界?には余計なものは排除されるからだ 僕は君がここに来ても来なくてもいいような気がした 君を排除してしまうほど 僕はこの世界に身を浸し過ぎていたのだ 君が来なくてもいいとは本音では無い でも心の奥へは君の存在はまだ入って来れないのだ 僕はこの平安に沈んでいって 何処までも沈んでいって 何か聖なるものに胸の中心を撃ち抜かれて この世界よりも永遠に眠りに就くのだ
 僕はもう一度左腕に付けた時計を見てみる やはり動いていない 小雨はいつの間にか止み コーラは既に酸が抜けてしまっている いつまで経っても君は来ない やっぱりこの世界は停止しているのかそれとも 僕の心が君の侵入を拒んでいるのか そのどっちでもないのか その両方なのか 僕には全く分からない
 でも一つだけ確かなことは この空間に僕は閉じこめられてしまったということだ 助けを呼んでも誰も来てくれないし 誰も来てはくれない 自分の望んだ世界だったのだ それが今さら拒否してもどうにもならない 後戻りはできない 僕は恐怖に満たされていった 小雨が再び降ってきた 僕は見えない先まで走っていった するとすぐに元の場所に戻ってきた 僕は家の中に飛び込んで母やピアノを弾いている妹の姿を探した しかし1?たりとも動かずにピタッ と止まっている 絶望が頭を突き抜けた 僕は庭へ飛び出して平安に体が沈んでいくのを見た 僕は必死に足掻いてみたがどんどん飲み込まれていく 僕は死にたくないのに 死を平安が優しくくるみ込んで僕を落ち着かせる 僕は何故バタバタしていたのか自分でも不思議がる やがて完全に飲み込まれると体は沈んでいき胸をひどく痛いものが突き抜けた 僕はにっこりと笑ってそのまま意識を失っていった 庭に転がっているコーラから一泡ぶくっ と泡が浮き上がってきた


自由詩 土曜日9時48分の庭 Copyright はじめ 2007-04-26 04:13:06
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