ぼくは詩を書こう

ぼくは詩を書こう
猫がいるような部屋で
とりあえず
ぼくは詩を書こう
そんなうたを聴きながら
きみのことを考えながら
きみがいないこの部屋で
とりあえず
ぼくは詩を書こう


きみはここにいない

そのあいだだけぼくは
ぼくでいつづけられる
きみはぼくのまえにいない
そのあいだだけぼくは
ぼくの筆を走らせつづけられる

ぼくはいま
誰かの手でつむがれている
名もなきエクリチュール

そしてきみはここにいない
そのあいだだけぼくは
きみで生まれつづけられる
そのあいだだけぼくは
きみという夢をみつづけられる

そしてきみはいまここにいない

きみがここにいないじかん
このじかんだけがいつまでも
ぼくをここにいつづけさせてくれる

やがてほんとうのきみが帰ってくる
きみが帰ってきたとたん
ぼくをつむぐ誰かの手はとまり
ただちにぼくはぼくのじかんから
パージされてしまう

ぼくはいつもきみの
じかんに間に合わない
きみはいつもぼくの
じかんに間に合わない

きみがここにいるとき
ぼくはここにいられない

そしてきみと誰かのじかんがはじまる


と書いて、うそだ

そもそもぼくはいま
♯彼女の部屋 になんていないし
はじめから きみ なんていやしない
かなしい独居男のげんじつだ
だからこの場合の
"きみ"は
"現代詩フォーラムのどく者"
ということになるだろう


そして間違いなく
きみは
いまここにいない

もう
ずーっといない気もする

だからいつまでも
ぼくは
ここにいつづけられる

きみやぼくはうみやりく
くうきのようにケーブルで
どこまでもはてしなく
つながっているのに
きみはここにいない

だからいつまでもぼくは
ぼくでここにいつづけられる

ぼくと同じにモニタのまえで
うたってる
きみの声は
いつも圧倒的な
不在感をたたえていて
まるで一流シンガーのよう

目のまえでうたってる
きみはいつもここにいない

だからいつまでもぼくは
きみで生まれつづけられる

きみと同じにモニタのまえで
うたってる
ぼくの声は
圧倒的にいつも
不在感をたたえて

きみがいない朝
だからこうしてぼくは
いつまでもぼくの
筆を走らせつづけられる


きみがいないじかん
に書いた
面と向かっては とても
いえない
くだらない詩ばかりさ
さも無表情な、
中井貴一の目で書いた
莫迦々々しい詩ばかりさ

そしてきみはいまここにいない

いつかきみが帰ってくるまでの
きみが間に合わなかった
じかん

だからこうして
ぼくは詩を書きつづけよう


散文(批評随筆小説等) ぼくは詩を書こう Copyright  2007-04-25 14:59:07
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