春のX
rue

殺してやるの輪郭を辿って行くとやるがくれになり
殺してと呟いてみたり殺してくれというと
最後に助けてなどと命乞いが産まれてくる

毎日何も考えずに幾人もの命の消滅を見過ごしながら
命の沸き出ずる春を愛でるその所作に惹かれ

布団の中のちっぽけな闇の中でナイフを腕に這わせ
小さな傷を付ける

まだ足りない
意識は脱線しない
同じ破壊衝動のレールの上をまっしぐらに走っている

足を止めようともせず走りつづけている
彼は修羅でなく只の肥満児
大きな胃を満たすために
誰かの何かの死を待っている
欲望を満たすために

自分が死ねばいいことなのに
自分の生にはこだわり続け
幼稚な性から成長を忘れ
壊れゆく内臓を憂いている

まだ終りたくないと泣き言を
口ずさみながら
死んでゆくのかい?

僕にはそんな勇気はない
だけどどうしても押したい
どうしてもXを押したいんだ。X


自由詩 春のX Copyright rue 2004-05-01 18:50:24
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