橋の下にある藻屑について
佐々宝砂

見てはいけないのだとわかってはいた
誰か忘れてしまったが誰かに教わったのだ
父でも母でも兄でもない誰かに
たいして長くもなく広くもないその川のその場所には
かつて利用されていた潜り橋の名残があって
その橋の名はチアラの橋と言うのだったが
チアラが意味するのは
血を洗う
なのだと知ったのはごく最近で
だからと言って見る必要は絶対になかったのだし
もう一度言うが
見てはいけないのだとわかってもいたのだ
そしていまやわたしは
もうひとつのことをわかってしまった
橋の下にある藻屑について
語ってはいけない
あなたがそれについてどんなに知りたいとしても
わたしがそれについてどんなに語りたいとしても
沈黙を守らねばならない

書くだけで
わたしは





自由詩 橋の下にある藻屑について Copyright 佐々宝砂 2007-04-22 17:49:27
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