春眠
楢山孝介


頭が少々重く
風邪気味であったので
目覚まし時計をかけずに
ゆっくりと眠ることにした
そのままうっかり百年間眠ってしまった

百年後の人類は
ファッションや顔色が少しおかしくなっただけで
まだまだ充分人類だった
エアカーもタイムマシンも出来ていないことに
僕は少しがっかりした

百年間の世界の動きを知るために
図書館で新聞データを閲覧していたら
ふと、眠る前に買ったロト6の数字を
思い出したので調べてみた
(いつも買っている、自分の誕生日と
 好きな野球選手の背番号を組み合わせたもの)
調べると、何と四億円当たっていた
払い戻し期限は当然とっくに過ぎていて
ショックのあまり僕は気を失った

気絶から目覚めるとまたさらに百年後の世界だった
人類は皆すっぱだかで外を歩いていた
どう見ても地球人に見えない連中もちらほらいた
エアカーはなかったが、人が空を飛べるようになっていた

幸いタイムマシンは実用化されていたので
身ぶり手ぶりで何とか頼み込んで乗せてもらった

ところがうっかり行先時間の設定を間違えてしまい
二十億年後の未来に着いてしまった
そこには宇宙人もあらゆる建造物も動植物も
さらには海までもが存在していなかった
もちろん人っ子一人いなかった

タイムマシンは僕を降ろすと勝手に帰ってしまったので
泣きたくなった、頭が痛くなった
そういえば風邪はまだ治っていないらしく
咳まで出てきた
咳をしても一人だった
剥き出しの太陽が僕を焦がし始めた
焼け焦げても一人だった


自由詩 春眠 Copyright 楢山孝介 2007-04-21 11:31:41
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