縞のないシマウマ
望月 ゆき

100円玉で買った
にんじんスティックを手に
檻の前に立つ

シマウマは
鼻を鳴らしてこちらを見る
たてがみも立派に

シマウマさん
このにんじんをあげるから
わたしにその黒い縞をちょうだいな

シマウマは無言だったが
その目は了解、と言ったように見えた

交渉成立。

わたしは 黒い縞をぐるぐると
巻き取った

帰りがけに
彼のところに寄ろう
そして 彼を
この縞でぐるぐると巻いてしまおう
身動きできないほどに

さて 行くとしましょう

早くも彼が自分のものになった
ような気がして
満足気に歩き出すわたし

にんじんをくわえて
ぶるん、と鼻を鳴らし
満足気にそれを見送る
縞のないシマウマ

シマウマは
縞がなくなったら
シマウマじゃなくなるのかもしれない


シマウマはそれでも
幸せそうだった


自由詩 縞のないシマウマ Copyright 望月 ゆき 2004-04-30 21:00:44
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