青磁の記憶
渡 ひろこ
遠い日の母の実家の飾り棚
なだらかな曲線で凛と立つ
重く押し黙る青磁の器
威厳と寛容をたもちながら
静かなまなざしを光らせていた
つるりとした青い光沢
ひんやりとした手触り
そっと頬を寄せると
芯から凍りそうな硬さだった
あれから何年たっただろうか
同じ手触りが甦っていた
それは祖父の亡き骸に触れた瞬間
あ・・・・
穏やかな顔で
すでに棺に収まった祖父は
陶器の人形となり横たわっていた
“あの世にいっても逢えるわけじゃないんだって・・・”
そう言ってかなわぬ夢と
さめざめ泣いていた祖母は
黄泉の国での再会は 果たせただろうか