懺悔
atsuchan69
微かに嗅ぐ、肌と肌。その色気づいた生ハムの匂い
やむなく賑やかな大通りを外れ、湿った石畳の狭い路地へ
疲れ果てた営みの世界をほんの数歩離れると、
異教徒の市場。――豚の耳や足、蜥蜴の干物等がならぶ
女、子供まで売られる店先を仄暗き顔の花売りが過ぎ
そして勝手気儘な、深淵へとつづく心の闇が巷に溢れる
唯ひとり、キリストの愛にどこまでも背けば
冷たい星の光が//宇宙に手を触れよ、と云う
アンドロメダから吹く、艶めかしい風の夜、
僕は初めて人を強靭な刃で殺めた。
胸には、鮮かに【死】の刻印が描かれ
磨かれた刃金の言葉が彼の心臓を貫いていた
歳まだ若く、彼は邪教の神の生贄となった
いつしか僕は、罪と名声との関わりを紐解く・・・・
つまり人はいかなる悪事を働いても、
処罰されぬかぎり幸福であるという事実。
したがって名声を得るためには万人の前で善を行い、
隠された場所で罪への生贄を屠るのである
星はまた、暦と支配の法則を僕に教えた
人が人でなく、真に奴隷であることや
大罪も、幾度となく重ねればやがて麻痺することも知った
まして他人の痛みなど、僕には全く無関係であった
万物が感情のない言葉によって築かれ、
感動と引換えに手中におさめた富や名声が
あまりにも空しく、虚空に消えてゆくさまを――
大地の上で極め尽くした栄華や知恵の数々が
ただ無味乾燥にすぎてゆく危うさを見た
穏やかな死を前にして思うことは、
人はより愚劣であることに価値が在る
香を焚いて、贅沢な衣を着るより
むしろ裸の身ひとつに価値が在るのだ
僕の失敗(あやまち)は、あの冷たい星に導かれて
挫折による憂いも、無心に祈ることの従順さもなく
ただ全能の叡智によって冷徹に生きたことだ。
しかし今宵。かの忌まわしき戒律を、悉く破ろうではないか?
大酒を呑み、ペリシテ人のごとく仔豚を丸焼きにしよう
神の巫女たちと交わり、生贄の祭壇を総ての正義とともに屠ろう
そう、聖なる神殿を焼き払い、華やかな異教の音楽に酔い痴れよう
――そして最後に、きっと誰かに救いを叫ぼう!