耳の産声
あおば

            2007/04/17


生まれたときは
なにも
見えなくて
最初に見たのは
放射光のように
青白い
君の
瞳だったとは
罪のない
たとえ話のつもりでいても
今日の、
耳の奥からも
牛若丸が飛び出して
弁慶めがけて斬りかかる
弁慶長刀振り回し
牛若めがけて
振り下ろす
金属と金属の激しい衝撃が
火花を散らし
暗い夜空を焦がします
大げさな形容を恥じて
古くさい感覚を納めてから
テレビのスイッチを切って
気を静めてから
窓の外の暗い空を仰ぎ見ると
冷たい雨が冬の顔して震えている
明日の朝はコートを被って小走りで駅に向かうのかと思うと
今から緊張してしまいますが、

耳の穴から牛若丸が出でまして
その名を九朗判官
では、義経にしておけとは
いくらなんでも
青菜に塩のていたらく
情けない。







注 終連は落語「青菜」より引用。
鞍馬から牛若丸が出でましてその名を九郎判官
では義経にしておけ。
(妻:お言いつけの青菜は戴いてしまいましたのでお客様(植木屋さん)にお出しできません。)
(夫:食べてしまったのならば仕方ない、出すまでもありません。)



自由詩 耳の産声 Copyright あおば 2007-04-17 22:37:08
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