「 日傘の女 」 
服部 剛

平日の夕暮れ 
みすぼらしい服を着た中年の男は
公園のベンチに座り 
モネ展の「日傘の女」のポスターを手に 
喰い入るようにじっと見ていた 

それを横目に歩いていると 
前から乳母車を押す若い婦人が近づいて来た 
寝かせられた赤子は静かな瞳でぼくを見て 
横切る時に、手をふった 
つられてぼくも、手をふった 

黄昏の陽が降りそそぐ 
夕暮れの公園の出口へと 
静かな足音で乳母車を押してゆく 
若い婦人の後ろ姿を 
ぼくは振り返る 

少し小さくなったベンチに 
中年の男の姿はすでに無く 

地に伸びた婦人の影は消え



 「日傘の女」 

   ふわり 

    風に舞っていた 





自由詩 「 日傘の女 」  Copyright 服部 剛 2007-04-16 09:55:53
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