瞳を染めて
atsuchan69

枯藻にまじる幾許かの誇りさえ
今は乾涸びて横たわる巨体
眼の放つ一瞬の光さえ砂に埋もれ、
青き海原は穏やかに空を見上げつゝ
波に穂を浮かべては露な境に遊ぶ

儚く岩礁にとぶ飛沫、
仰ぎ見れば海鳥の声に散る
ただ、一滴の涙も荒磯に消え
痩せた女の狂い叫ぶ姿、
潮の上りに相俟って呪いの詩に沈む

黝いまなざしに呼び覚ます白帆
軋みゆく心のまどいに我身を忘れ
――やがて来たる大波のうねり
耳を傾ければ、ざわめく無限への誘い
エーゲの匂いに満ちて躯(むくろ)も輝く

砂に咲くアルメリアの色に瞳を染めて
ふたたび誰を呼ぶのか、果てしなき海の煌めき





自由詩 瞳を染めて Copyright atsuchan69 2007-04-15 03:25:44
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