ら、むーん ★
atsuchan69

微かに血の色を混ぜた
純白の火照り。
月光を浴びた濃淡の起伏が、
永くしずかに波打つ夜

幾重にも重なりあう
厳かな山脈を流離う爛漫、
滑り落ちる霞のごとく
裾野へ降りて散る花、死、花の吹雪
青褐に染まる森を見下ろし
おぼろげな雲に隠れた
ほろ酔いの影の淡さが声に滲む、

生娘の笑みを想わせて
彼処にうかぶ、
夢ごこちの華たち
光を浴びた木々の枝に、
芽吹き犇きあう葉たちの在るがまま
夜露に濡れた草葉の蔭、
湿った土を這う虫たちは蠢く

 あれは嵐の晩
稲妻に倒れ、今も横たわる朽ちた老木
そして寄添うように群生し、
俄(にわか)に育つ菌類の欲深な匂い
その膠質の粘液に映りかがやく
         ――ら、むーん
             (甘いささやき

仄かに発光し、花弁の絨毯の上を
揺れつづける声が中空を舞う )))
妖精の羽ばたきにも似た
哀しくも甘い息と息、その喘ぎ
夢うつつに交わす、つがいの音色は清く

疑う者たちへの沈黙と笑み、
「答え」は、
一瞬のうちに――
細く柔らかな咽喉を)
鋭利なことばで/切り裂く

 サクラ、
その薄紅のはなびらが夜も尚、
歓びに震えつづける刹那
人知れず山懐の擁く万象を見渡し、
散るさまはかなしみもなく

ただ雲の間に、いくぶん懼れを孕んで」」








自由詩 ら、むーん ★ Copyright atsuchan69 2007-04-11 01:54:51
notebook Home