翼を捨てた鳥
ぽえむ君

その鳥はとても小さく弱かった
食べ物を見つけても
すぐに他の動物に横取りされたり
時にはその鳥自身が食べられてしまったり
することもあった
その鳥にとってこの世界のどこかを
支配するどころか居場所すらなかった
無理だとか不可能だとか
そんな言葉で満ちていた
しかしその鳥は絶滅の道を歩かなかった
鳥は鳥の象徴とも言うべき翼を捨てた
翼を捨てた鳥は空を飛べなくなった
しかしそのかわり
海を飛ぶようになった
厳しい環境の中に適応したのだ
かつてそこはどんなに強い
どんなに大きな動物であったとしても
その場所を支配することは
それこそ無理あるいは不可能だった
誰もができなかったことを実現したのは
小さくて弱い生き物だった
鳥は体をデザインする以前に
すでに心をデザインしていたのだ
翼を捨てた鳥は
その翼で大空を飛ばなくとも
心の翼ですでに飛んでいた


自由詩 翼を捨てた鳥 Copyright ぽえむ君 2007-04-07 22:19:21
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