I'm home
ワタナベ

さいきんなぁんもかんもわすれていきよるち
おかあちゃんがいいよった
なーなー、おかあちゃん
ぼくんことも
いつかはわすれてしまうん?

こーえん
ゆうやけこやけのあかとんぼ
うしろのしょーめんだあれ?
おじちゃんだあれ?


      おれは


雨が降っている、オフィス街は煙る灰色の雨にさらされ
窓から見下ろすと暗めのトーンの色の傘の群れが
道の両脇を流れるように行き交う
俺はたまった仕事を片付けた後
コーヒーを片手に煙草をすっていた
ふと思い出した断片的な子供の頃の記憶
胸をしめつけるノスタルジー
うしろのしょうめんだあれ、か
うしろのしょうめんだあれ
君は誰?


      ぼくは


ぼくはおかあちゃんがいちばんすき
そんでおとうちゃんは273ばんめにすき
そーゆうたらおかあちゃんは
おとうちゃんに
おとうちゃんは273番目やってって
それでにっこりわらって
きょうはぼくのいちばんすきな
にくじゃがにしてくれるんやって
やっぱりおかあちゃんはいちばん


ノスタルジーはいつも優しい夕焼けの顔
残酷で優しい夕焼けの顔
帰れないのならいっそ消えてくれ
帰る場所なんていらない
でも帰りたい、帰れるものなら
煙草の灰色の煙の中に、必死に母の面影を探す
うしろのしょうめんだあれ


振り向いてもそこにはデスクがならんでいるだけで
電話対応に追われたスーツ姿の同僚達が
忙しなくその間を歩きまわっている
あの頃の”ぼく”はもういない



もーいーかい
まあだだよ






自由詩 I'm home Copyright ワタナベ 2004-04-28 00:57:49
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