呼吸

私が殺した感情は
私の中で静かに眠る
消えてしまったものでなく
忘れ去られたものとして
奥につかえて何かを残す

私は必死で辻褄合わせ
殺したものに気付いていない


私が飛ばした感情は
誰かの隙間を漂っている
定めた的をすり抜けて
思いがけずに落下して
どこかへ住み着き姿を変える

私が一度手放したなら
どう生きるのかわかりはしない


私が抑えた感情は
私の今を内から叫ぶ
外へ出るのは不可能で
しだいに熱を失って
それでも強く声を震わす

私は自ら閉じた窓辺に
抑えつけられ動けずにいる




つくろった一日の終わり
夜の天井に
ぼんやりと影が浮かんで
静寂の中
私は彼等に話しかける

返事はいつも 聞き取れないまま
私が先に眠ってしまう




私が抱いた感情は
私を作り息をしている
それを確かめようとして
或いは伝えようとして
数えきれない言葉が生まれる

私の言葉は言葉にすぎず
表すものは影にすぎない

それでも

そこから生まれる感情が
夜明けの窓を叩くから
私は言葉をまた紡ぎだす

夜の数だけ積み重なった
拙い答えの その一つとして


自由詩 呼吸 Copyright  2007-04-04 21:47:01
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