孤灯
湾鶴

はじめはわからなかった
仏舎利塔なのか
噴水なのか
生き物なのか
ひと足ごとにみえてくる
どうやら人らしい それ
まばらな街のあかりでは
まだ 性別はわからない
声をかけれるほど近づくと
白髭に覆われた老人だとわかった
墨のような体はえびぞったまま
固まっていた
時が経っても変わらない
赤ん坊のようなうるんだ瞳は
まっすぐ天をみつめていた

わたしも天を見上げる

なにも飛んでいない
風船も吸いこまれず
星もでていない
からっぽの夜空
ならば哀愁があるのかと
彼の瞳を覗いたが
なにも語っていなかった

地面に散らばった悲しみ
ようやく みつけた
彼はひとつ踏んづけていたが
もう忘れてしまったようだ






自由詩 孤灯 Copyright 湾鶴 2004-04-26 22:08:00
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