在る 少女
川口 掌

西の空に太陽が
その実を預けようと傾く頃
少女が一人
視線を ちに向け彷徨う
三歩四歩
前へ進むと 振り返りもせず
二歩三歩後ろへと下がる
どこへ 行くとも無しに
その姿はまるで 繋がれた
子犬のようだ
一台の
引越し屋のトラックが
駆け抜けず その脇に停車した
父親らしき男が荷物を抱え車に近付く
たゆたう少女の脇
黙々と荷物を積み込み
作業を終え
ものも言わずトラックに
乗り込む父親らしき男
走り去る
トラックをじっと見つめる
少女の傍らにいつのまに現れたのか
母親らしき女が少女の肩を抱く
共にトラックを
どこか遠い視線で見送り
母親らしき女は
又いつしかその姿を消していく
トラックの去った方向を
いつまでも目をそらす事無く
見つめる少女
いつしか
降り始めた雨は
静かに佇む少女の肩に
いつまでも
いつまでも降りかかる


自由詩 在る 少女 Copyright 川口 掌 2007-04-01 10:49:11
notebook Home 戻る