かなしみ
たもつ

亀を背負って
懐かしい人の苗字を呼びながら
塩を舐め続ける
水が飲みたい

+

かまきりの新しい
亡骸を
司書は黙って
見ている

+

カンガルーが直立したまま
波音を聞いている
尻尾の先には
民家が一軒ある

+

かなしみに似たものを
鍋に入れて
静かにあなたが
味噌を溶いてる

+

カーテンが風に
なびく
島根県の
皆川さんの八畳間で

+

カナカナが
鳴き始めた
親戚のおばさんは
ミンミンゼミが、と書いた

+

かなしみ、と
名づけられた海を
白いゼッケンをつけた父が
道と間違えてどこまでも走っていく



自由詩 かなしみ Copyright たもつ 2007-03-31 17:18:09
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アクロスティック