盲目なメガネ
ぽえむ君

メガネは目が見えなくなってしまった
どこに何があるのかわからない
手探りで記憶と慣れを頼りにしながら
必要なものを手にとるしかなかった
メガネにとって
目の前も頭の中も全てが真っ白だった
目以外で感じとるしかない
横になりながら医者が来るのを待つ
時は長く感じた
壁にかけてある時計の秒針が
心臓の鼓動に響き渡る
春の風が窓から入ってくる
遠くで小鳥の鳴き声が聞こえる
今日はきっと気持ちのいい天気なのだろう
メガネは今まで気づかなかったものが
見えるようになった
薬品の匂いがする
きっと医者が到着したのだろう
車に乗せられどこかに運ばれていく
そして急に眠くなってゆく

どのくらいの時間が過ぎたのだろうか
ゆっくりと目を開けた
病院の手術室がそこにあった
視力を完全に回復したメガネは外に出て
目に見える風景を見渡した
メガネは見えないものを
見ることができなくなっていた


自由詩 盲目なメガネ Copyright ぽえむ君 2007-03-31 13:17:41
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