蜃気楼の彼方
アマル・シャタカ

罵りあうためにあなたを欲したのではなかった
ただ
ままならぬ人の世で瞬きの間だけでも
互いの鼓動を抱きしめることで
少し眠りたかっただけなのに
淋しさよりも悲しみを
罵声ではなく歌声を
それさえも持ち寄れなかった僕達は
一体何を求めていたのか
君の美しさが永遠を保障しないように
僕の貧しさも永遠を保障することはない
ましてや二人の命さえも

何かを信じて手を取り合うには
この世界は荒みすぎていたけれど
だからといって
互いの弱さまで責めることはなかった
僕の心が渇いたのなら
君の涙を舐め取ればよかった
君の心まで渇いたのなら
二人して雨に打たれればよかった

不完全だからこそ二人して生きていくのだということを
太陽と月は教えてくれていたのに
光だけの世界とか闇だけの世界とか
僕達はそれぞれの言い分だけに埋没する
一人が嫌だといいながら我欲に固執し
愛する人を忘れてしまう
忘れるたびに悲しんでは
本当の人をとさまよい歩く
君が流した涙の跡を一人静かに辿る
あの日二人が求めたものが一体何であったのか
忘却の砂に埋もれながらも
蜃気楼に誘われるまま僕は


自由詩 蜃気楼の彼方 Copyright アマル・シャタカ 2007-03-29 14:20:47
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