ひと夏
千月 話子


干乾びた小動物の
骨を拾って土に埋めた
湿った赤土の上を
ゴム製の靴底で踏みしめたから
今度生まれてくる時は
強い動物になるのだと思い込んで
きつく きつく 手を合わす
仕来たりなど知らなくて
飾り花もお供えも 何も無くて
静かなお墓の前で 何となく踊った
くるくる くるくる



ありすは それを木陰で見ていた
静かに 静かに 見ていたもので
食べ忘れたアイスから
流れ落ちる 甘いミルク
土臭くない森の中
集まる虫は 際限なく 際限なく
止められもせず 腹を潤す
翌日には動けなくなり 干乾びて
土に帰る準備をするので

森は思う 何となく嬉しい と



「お帰り ありす」と あんりは言った
それから何も言わなくなって
美しい子供の姿をして 彼は笑う 
輝く金の穂をさわさわと撫で
あんりの子供の手から
大きな太陽の温もりを移し移して
悲しいから泣くの?優しいから泣くの?
青い目から海は溢れて
金色の目が それを乾かして
2人して窓辺に座り 空を見ていた

 るるる とありすが歌うから
 ららら とあんりも重ねて歌う
 白い小鳥の歌を 作って



ぼくは 遠い木陰から
どうしてか 静かに静かに
窓辺を 見ていた
2人して居なくなるだろう明日を思って

木の枝を螺旋に動くリスの口元から
くるくる くるくる 木の実が落ちて
ぼくは 小動物の骨を拾って
沢山のお墓を作って泣くのだろうか
誰に怒られてもいい明日
羽枕を引き裂いて 何度も拾って
飛ばして 踊ろう 僕は小鳥
お墓の上で踊りながら泣くのだろうか

ねえ 森よ
あの子達は何処へ(飛んで)行ったんだろう
黒髪に 風が通り
ぼくは思う 何となく悲しい と







自由詩 ひと夏 Copyright 千月 話子 2007-03-28 23:51:31
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