樹海
umineko

 生きて帰った者はいないと
 時折
 こころをよぎる声
 森はしずか

 ずいぶん昔に
 からまった命綱
 捨てられないねと
 君が笑う

 さざめく木の葉のすき間から
 漏れ落ちる太陽は
 世界のすべてに平等だ
 憎らしいほど

 誰かの空
 誰かの胸

 さくさくと
 君が歩く
 足元で
 水が跳ねる

 名も知れぬ草の葉先が
 僕の腕を切る

 キス
 しようか

 ふたりはまた
 笑う
  
  


自由詩 樹海 Copyright umineko 2004-04-25 18:47:18
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