スター・サファイア
atsuchan69
合わせ鏡の無限につづく
午後の部屋に宝石ごと散らばる
湿った夜の匂いは 勢い、
女の前髪を固めるスプレー
そして酷くリアルな口紅の
仄かに苦い蝋の味。
――さて、早々と店にゆく
カウンターの背後に納めた酒の瓶
あいつがキープしたジャックダニエル
「チーフ、それってさぁ・・・・
(あの人、テキサスローズしか頼まないんだ)
チーフはグラスを拭きながら、
「知ってます。これってカクテル用でしたね
「なんだか焼うどんが食べたいナ
「焼うどん、作りましょうか?
「うーん、食べたいけど。やっぱり我慢する
「で、あの方。今日も、お見えに?
「さあ、どうかしらね。
「いつも電波ナ、訳のワカラナイお話するのよね
「ご本人は、確か火星から来たと
「幾百万年もの時を越えて・・・・
「遙々、貴女に逢いにキター!
「アハハハハ・・・・可笑しいわ
「夜から雨みたい、今日は暇かも
「どおりで皆さん、ご出勤されるの躊躇ってらっしゃる
誰に買ってもらったのか 左の指には、
細かなシルク・インクルージョンの混じった
カボションカットされたスター・サファイア。
「値段は秘密。きっと高級外車一台分くらい
でも、これって若向きじゃないヮ
あの人に――
今日はまだデンワもしていないんだな、ワタシ