春ごとに沈殿する
LEO

あれから
いくつ春を
数えたかしら
わたしの中に眠るあなたは
春ごとに目覚める


黒と白の斑尾模様の猫が
出迎えてくれた細い路地
人の気配が消え
静まり返った石畳
入り組んだ奥の方から
甘い香りがして
あなたとふたり
匂いに誘われる
足音をしのばせ
軒下をくぐり
求めたものは
花もたわわに薄紫の沈丁花
目眩するほどに香しく
並べた肩は
触れそうで触れない
ふたりの距離に
呼吸を止めた
あのとき
言えなかったひと言を
胸の中に記したまま
重ねてゆくだけの
匂いに沈む春


あなたの
影だけを抱いたまま


自由詩 春ごとに沈殿する Copyright LEO 2007-03-23 21:47:37
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