願望
水町綜助
答えればいい
君は君を壊せば世界と自分がおさらばだとか
思っているかもしれないが
世界は君を含めてるから
君が目をひらいてるから世界は
ふたつは寸分違わずおなじもので重なっているわけでもなくまさに同一個体だから
君が君にナイフを突き立てようとした瞬間
それを握った君の手は世界の手だから
振り上げられたナイフは空を切り
何者にも刺さることはない
だれにもだ
世界は世界で
ふと君を疎外しようとするとき
疎外する対象がよくみれば
鏡に映った不細工な汚れたゴミだらけの自分だ
ということに気づきくだらねえってその気をなくすよ
んなもん
君は世界なんだよ
気づきなよ
だからしたり顔でどっかの馬鹿が
おぎゃあとかふぎゃあだかは知らんけどなんか泣いて生まれたとき人はすべからくひとりだとかいうけど
ああとかううとかだかは知らんがなんかうめいて死ぬとき人はすべからくひとりだとかいうけど
ほんとうは医者とか母親とか父親とかままもぱぱもいれば兄弟とか看護婦もそうだどっかの競馬場でまけたよくそとか痰吐いてるおっさんもそうだしそいつが捨てた馬券もたばこもすいがらもはっぱもちりがみもコートもウーロン茶も大統領もダライ・ラマもキリストの記憶もぶっだも宇宙もチンカスもコードも猫も世界デザイン博覧会もぱんだも青空も海もつちもゆうひも全部ごっちゃ混ぜの闇鍋として生まれてきてんだ君は
だからはっきりいってこわすもころすもすてるもわるもしぬもいきるもねえ
そがいもこどくもなかまとかともだちとかいうがいねんもかぞくもたにんもねえ
きみはすべてだ
めちゃくちゃだ俺の言ってることはだけど
君は世界だ
だから
いいか
俺をころすな
君である俺を殺すな
君の中の俺を殺すな
君の眼の中の俺を殺すな
俺を見てろ